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PC(ポリカーボネート)の切削加工

ケース・ハウジングの実物
高い耐衝撃性と透明性を兼ね備えたPC(ポリカーボネート)は、数あるエンジニアリングプラスチックの中でも特に汎用性の高い素材として知られています。しかし、ポリカーボネートの切削加工には独自の難しさがあり、素材の特性を損なわずに高品質な仕上がりを実現するには、専門的な知識と技術が求められます。

本記事では、ポリカーボネートの基本特性から、加工時に注意すべきポイント、さらには実際の加工事例までを詳しく解説します。

PC(ポリカーボネート)とは

PC(Polycarbonate, ポリカーボネート)は、優れた耐衝撃性と透明性を兼ね備えた熱可塑性エンジニアリングプラスチックです。​その特性から、光学部品や電子機器、自動車部品など、幅広い分野で利用されています。​

PC(ポリカーボネート)の代表的な特性

1. 高い耐衝撃性

ポリカーボネートは、プラスチックの中でも最高レベルの耐衝撃性を有しており、一般的なガラスの約200倍の耐衝撃性を持ちます。​この特性により、防弾素材やヘルメットのシールドなど、安全性が求められる用途に適しています。 ​

2. 優れた透明性

可視光線透過率が80〜90%と高く、ガラスと同等の透明性を持ちます。​そのため、カメラのレンズや車のヘッドランプなど、光学的性能が求められる製品に使用されます。 ​

3. 耐熱性

ポリカーボネートは、-40℃から125℃までの広い温度範囲で使用可能です。​ガラス転移温度は150℃であり、荷重たわみ温度は約120〜130℃です。​この耐熱性により、電子機器の外装や照明部品など、熱がかかる環境でも安定した性能を発揮します。

4. 寸法安定性

非晶性樹脂であるため、成形収縮率が小さく、吸水による寸法変化も少ないです。​これにより、精密な寸法が求められる部品にも適しています。

5. 自己消火性

ポリカーボネートは、自己消火性を有しており、火がついても燃え広がりにくい特性があります。​この特性は、電気・電子機器の外装など、安全性が重要な用途で重宝されています。

PC(ポリカーボネート)の主な用途

ポリカーボネートは、その優れた特性から、以下のような多岐にわたる分野で使用されています。​

・光学部品:​カメラのレンズ、メガネレンズ、DVD基板など。
・電子機器:​スマートフォンのボディやケース、LED照明のレンズ、家電製品の外装など。
・自動車部品:​ヘッドランプ、メーターパネル、内装部品など。
・建築資材:​パーテーション、高速道路の遮光板、カーポートの屋根材など。
・安全用品:​ヘルメットのシールド、防弾素材、機動隊の盾など。

PC(ポリカーボネート)切削加工の難しさと対策

割れ(クラック)

ポリカーボネートは高い靭性を持つ一方で、切削加工時に発生する熱や応力により、微細な割れが生じることがあります。​特に、加工中の摩擦熱が蓄積されると、材料内部に応力が集中し、割れの原因となります。​

割れは、製品の強度や外観に悪影響を及ぼすため、加工条件の最適化が求められます。​対策としては、適切な切削速度や送り速度の設定、クーラントの使用による熱管理が有効です。

むしれ

切削加工中に発生する摩擦熱が過度になると、ポリカーボネートの表面が溶融し、材料が引き伸ばされて表面が荒れる「むしれ」が発生します。​これにより、加工面の品質が低下し、後工程での仕上げ作業が増加する原因となります。​適切な切削速度の設定や、クーラントの使用による熱管理が重要です。

透明度の低下・白化

ポリカーボネートの特徴である高い透明性は、切削加工時の表面損傷や熱影響により損なわれることがあります。​特に、加工中の微細な傷や熱による分子構造の乱れが原因で、表面が白濁し、透明度が低下する「白化」現象が発生します。

​この問題を解決するためには、加工後の適切な表面処理や、蒸着、研磨が必要とされます。

PC(ポリカーボネート)を含む主要樹脂 比較表

PC(ポリカーボネート)の切削加工事例

ケース・ハウジングの実物

こちらはは、乳白色ポリカーボネート製の特注ケースの加工事例です。

市販材料では対応できない50mm厚の仕様に対し、当社ではペレットから厚板を成形するところから対応し、ご要望通りの形状・寸法での加工を実現しました。このように、当社では市販にない材質・サイズでも、材料成形から切削まで一貫して対応が可能です。特注品や特殊形状にも柔軟に対応いたします。

>>加工事例の詳細はこちら

PC(ポリカーボネート)の切削加工は当社にお任せください!

ポリカーボネートは、優れた耐衝撃性や透明性、耐熱性を兼ね備えた高機能エンプラとして、多様な産業分野で活用されています。一方で、切削加工においては「割れ」「溶着・むしれ」「透明度の低下」といった課題が伴い、素材特性を理解した上での熱管理や加工条件の最適化が欠かせません。

ポリカーボネートの切削加工をご検討の際は、豊富な実績と技術力を持つ当社にぜひご相談ください。

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