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UHMW-PE(超高分子量ポリエチレン)の切削加工

近年、産業界の多様なニーズに応える高性能素材として、UHMW-PE(超高分子量ポリエチレン)が注目を集めています。一般的なポリエチレンとは一線を画すその性質は、耐摩耗性・耐衝撃性・耐薬品性といった優れた特性に加え、軽量で水分を吸収しにくいという点でも高く評価されています。そのため、食品機械から医療機器、半導体製造装置まで、極めて幅広い分野で採用されているのです。

本記事では、UHMW-PEの基本的な特性から具体的な用途、さらには「切削加工が難しい」と言われる理由や高精度加工のポイントに至るまで、詳しく解説していきます。

UHMW-PE(超高分子量ポリエチレン)とは

超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)は、分子量が100万以上、場合によっては500万〜900万に達するポリエチレンの一種で、エンジニアリングプラスチックの中でも特に優れた性能を持つ素材です。その特性から、食品機械、搬送機器、医療機器、半導体製造装置など、幅広い分野で利用されています。

UHMW-PE(超高分子量ポリエチレン)の特長

・耐摩耗性と自己潤滑性

UHMW-PEは、非常に高い耐摩耗性を持ち、金属や他の樹脂材料と比較しても優れた性能を発揮します。また、自己潤滑性が高く、摺動部品として使用する際に潤滑剤を必要としないため、メンテナンスの手間を軽減できます。​

・耐衝撃性

ポリカーボネートを上回る耐衝撃性を持ち、極低温環境下でもその性能を維持します。​この特性により、衝撃が加わる可能性のある部品や装置に適しています。​​

・耐薬品性

酸、アルカリ、有機溶剤に対して高い耐性を示し、化学薬品が使用される環境でも安定した性能を発揮します。

・軽量性と非吸水性

密度が930〜940kg/m³と軽量であり、製品の軽量化に寄与します。​また、吸水率がほとんどゼロに等しく、水分による膨潤や強度低下が起こりにくいため、水を使用する環境でも寸法安定性を保ちます。

UHMW-PE(超高分子量ポリエチレン)の主な用途と活用分野

・食品機械

UHMW-PEは、無毒で安全性が高く、食品衛生用途に適しています。​耐摩耗性と非付着性に優れているため、ホッパーやサイロ、シュートなどの内張りライナーとして使用され、食品の搬送や加工において衛生的な環境を維持します。

・搬送機器

チェーンコンベア、ガイドレール、ローラー、ライナーなど、摺動部品として広く利用されています。​高い耐摩耗性と自己潤滑性により、摩耗や焼き付きのリスクを低減し、装置の寿命を延ばします。

・医療機器

人工関節やカテーテル、人工血管など、体内で使用される医療機器において、UHMW-PEは生体適合性が高く、耐摩耗性や耐薬品性に優れているため、長期間の使用に耐える素材として採用されています。

・半導体製造装置

半導体製造装置では、クリーンな環境が求められるため、低発塵性や耐薬品性が重要です。​UHMW-PEは、これらの要求を満たす素材として、装置内部の部品やライナーとして使用されています。​​

他の樹脂材料との比較:UHMW-PE(超高分子量ポリエチレン)を選ぶべきケース

1.高い耐摩耗性と摺動性が求められる場合

UHMW-PEは、非常に低い摩擦係数と高い耐摩耗性を兼ね備えており、摺動部品やライナー、ガイドレールなどに最適です。

2.高い耐衝撃性が必要な場合

他の多くの樹脂材料よりも優れた耐衝撃性を持ち、衝撃が加わる可能性のある部品や装置に適しています。

3.耐薬品性が求められる環境

酸やアルカリ、有機溶剤に対して高い耐性を示し、化学薬品が使用される環境でも安定した性能を発揮します。

4.コストパフォーマンスを重視する場合

UHMW-PEは、他の高性能樹脂材料(例:PTFE、PEEK)と比較してコストが低く、経済的な選択肢となります。

5.軽量化が必要な設計

密度が約0.94 g/cm³と軽量であり、製品の軽量化に寄与します。

UHMW-PE(超高分子量ポリエチレン)の切削加工が「難しい」と言われる理由

1. 高い粘性と低い熱伝導性

UHMW-PEは高い粘性を持ち、切削時に工具との摩擦が大きくなります。また、熱伝導性が低いため、加工中に発生した熱が材料内部にこもりやすく、加工面が溶けたり、寸法精度が低下する原因となります。​

2. 寸法安定性の確保が難しい

切削中の熱膨張や加工後の収縮により、寸法の安定性を保つことが難しいです。特に、精密な寸法が求められる部品では、加工後に変形が生じる可能性があります。

3. 表面仕上げの難しさ

UHMW-PEは柔らかく、切削時にバリや削りカスが発生しやすいため、滑らかな表面仕上げを得ることが難しいです。

UHMW-PE(超高分子量ポリエチレン)を高精度に切削加工するためのポイント

1. 適切な工具の選定

鋭利で高硬度の切削工具を使用することで、切削抵抗を減らし、加工面の品質を向上させることができます。

2. 切削条件の最適化

切削速度や送り速度を適切に設定し、切削熱の発生を抑えることで、加工中の熱による変形を防ぐことができます。また、切削液を使用して冷却することも効果的です。

3. 加工前後の温度管理

加工前に材料の温度を一定に保つことで、熱膨張による寸法変化を抑えることができます。また、加工後にアニール処理を施すことで、残留応力を除去し、寸法安定性を向上させることができます。​

4. 切りくずの処理

切削中に発生する切りくずが工具や加工面に付着しないよう、エアブローや切削液を使用して切りくずを除去することが重要です。

UHMW-PE(超高分子量ポリエチレン)の切削加工なら、当社にお任せください!

UHMW-PE(超高分子量ポリエチレン)は、その高い耐摩耗性・耐衝撃性・耐薬品性をはじめとした優れた特性により、幅広い産業分野で不可欠な素材となっています。食品機械や医療機器、半導体製造装置など、過酷な環境下でも安定した性能を発揮する点が大きな魅力です。一方で、切削加工には高度な技術とノウハウが求められるため、加工条件の最適化が重要です。

UHMW-PEの切削加工をご検討の際は、豊富な実績と技術力を持つ当社にぜひご相談ください。

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