ポリプロピレン(PP)の切削加工

ポリプロピレンは、汎用性の高い熱可塑性樹脂でありながら、高い機械的特性や耐薬品性を備えており、医療・食品・電子機器・産業機器など、様々な分野で幅広く使用されています。
特に切削加工にも適した素材であることから、試作や小ロット生産にも柔軟に対応でき、設計から量産への橋渡しに最適です。
本記事では、ポリプロピレン(PP)の基本特性や、切削加工における注意点について詳しく解説します。
ポリプロピレン(PP)とは?ポリプロピレン(PP)の特長
ポリプロピレン(PP)は、「プロピレン(C₃H₆)」を重合して得られる熱可塑性樹脂で、汎用プラスチックの中でも特に広く使用されている素材です。一般には「PP(ピーピー)」と呼ばれ、正式にはポリプロピレン樹脂と称されます。
特長① 軽量性と高強度の両立
PPの最大の特徴は軽さにあります。比重はおよそ0.9と樹脂の中でも最軽量クラスでありながら、高い剛性と機械的強度を兼ね備えています。これはPPが結晶性樹脂であり、高い結晶化度によって剛性・耐衝撃性を確保しているためです。軽量部品やコストダウンが求められる設計において、PPは非常に有効な選択肢となります。
特長② 耐薬品性・耐熱性・耐候性に優れる
PPは耐薬品性や耐熱性に優れ、酸やアルカリにも強いため、医療・医薬・食品・半導体関連装置など、幅広い分野で採用されています。さらに、屋外での使用にも対応可能な耐候性を持ち、製品の長寿命化にも貢献します。
特長③ 切削加工に適した様々なバリエーション
PPは切削加工にも適した素材であり、用途に応じてさまざまなグレードが用意されています。一般グレードに加えて、以下のような高機能タイプが選ばれています。
・ガラスフィラー入り強化タイプ:機械的強度や剛性を高める際に適しています。
・導電性タイプ(静電気対策品):電子機器や半導体分野での帯電防止用途に有効です。
・高耐熱タイプ:耐熱温度を向上させたグレードで、より厳しい使用環境に対応します。
・ブルーPP(食品用途向け):食品製造工程での異物混入対策として注目されている青色に着色されたPPです。MCナイロンの代替として利用が拡大しています。
特長④ 環境対応素材としての側面
PPは再生可能性に優れた素材でもあります。リサイクル適性が高く、持続可能な製品設計が求められる現代において、環境配慮型材料としての価値も高まっています。
ポリプロピレン(PP)の切削加工における重要ポイント
PPの切削加工で押さえておくべき3つのポイントをご紹介します。
1. 切削速度の管理
PPは摩擦熱に弱く、低い軟化点(約110〜160℃)を持つため、高速切削を行うと加工中に溶融やバリの発生といったトラブルを引き起こすリスクがあります。そのため、切削速度は中低速を基本とし、工具との摩擦による温度上昇を常に監視することが重要です。
加工時には、エアブローを併用することで発熱を抑制し、加工面の品質を安定させる工夫も有効です。
2. 刃物の選定と管理
PPは比較的柔らかく延性の高い樹脂です。そのため刃先の角度は、切削抵抗を最小限に抑え、溶けやバリの発生を防ぐよう最適化されていることが望ましく、ポジティブな逃げ角を持つ工具が有効です。
また、切れ味の低下した刃物を使用すると、素材が引っ張られて加工精度が不安定になったり、熱の発生で溶融が生じたりすることがあるため、刃物の定期的な交換・メンテナンスが不可欠です。
特に、ガラスフィラー入り強化タイプは硬度が高いため、刃物がかけやすいです。そのため、専用の工具を使用し加工することが求められます。
3. 反り・歪みへの対応
PPは、切削加工中や加工後の温度変化・内部応力の影響により、反りや歪みが発生しやすい材質です。これを抑えるためには、反りやすい形状に対して応力を分散するような加工順序やクランプ方法を工夫することが重要です。
ポリプロピレン(PP)の切削加工事例:注射器部品
こちらは試作段階で製作した注射器部品です。
偏心形状の先端を標準的な2軸旋盤で高精度に加工し、肉厚わずか1mmという難易度の高い条件でも、加工条件の最適化によりビビりや割れを防止しています。結果として、内径寸法±0.02mmの高精度を実現しました。
ポリプロピレン(PP)の切削加工のことなら、当社にお任せください!
PPは、その軽量性・耐薬品性・加工適性・環境対応性といった多くの特長から、様々な用途で使用されています。
一方で、軟化温度の低さや反りやすさといった特性を考慮し、適切な加工条件・工具選定・素材管理を行うことが、製品精度と品質を確保するための鍵となります。
当社では、PPをはじめとする多様なエンプラ・汎用樹脂の切削加工に対応しており、素材選定段階からの技術相談も承っております。PPの切削加工をご検討の際は、ぜひ当社にご相談ください。