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筐体設計|製品の「顔」と「性能」を形作る戦略的アプローチ

製品開発において、内部の精密な部品を保護し、その性能を最大限に引き出す「箱」の設計は、単なる機能の一部にとどまりません。製品の第一印象を決定づけ、ユーザーエクスペリエンスを左右し、さらにはコストや市場での競争力に直結する重要なプロセス、それが「筐体設計」です。

本記事では、特にデザイナーやベンチャー企業の皆様に向けて、筐体が持つ多角的な役割と、魅力的な製品を生み出すための設計のポイントを深掘りします。

なぜ筐体設計が製品成功の鍵となるのか?

筐体設計は、製品の「顔」となる外観だけでなく、その「性能」を支える骨格でもあります。スマートフォンから産業機械まで、あらゆる製品に欠かせない筐体は、多岐にわたる重要な役割を担っています。

内部部品の徹底的な保護と信頼性向上

製品内部には、デリケートな電子部品や精密なメカニズムが収められています。筐体の最も基本的な役割は、これらを外部環境から守ることです。

・衝撃・振動からの保護

落下や外部からの衝撃、動作中の振動から部品を守り、製品の故障リスクを低減します。特に、モバイル機器や産業用センサーなど、過酷な環境下で使用される製品では、高い耐久性が求められます。

・環境要因からの保護

ほこり、湿気、水滴、薬品など、製品の性能を低下させる要因から内部を守ります。防水・防塵設計(IP規格など)は、屋外設置機器や医療機器において不可欠であり、製品の安定した動作と長寿命化に貢献します。

・電磁波・ノイズ対策(EMC)

内部で発生する電磁ノイズの外部への漏洩を防ぎ、また外部からのノイズが内部回路に与える影響を軽減します。これにより、製品の誤動作を防ぎ、安定した性能を維持します。これは、特に高周波を用いる電子機器や医療機器において、極めて重要な設計要素となります。

製品の「顔」としてのデザインとユーザーエクスペリエンス

筐体は、製品が市場でどのように認識され、ユーザーにどのような印象を与えるかを決定する「ブランドイメージの表現」そのものです。

・美観とブランドイメージ

形状、色、質感といった要素は、製品の第一印象を大きく左右し、ブランドの個性を表現します。洗練されたデザインは、消費者の購買意欲を高め、市場での差別化に繋がります。

・操作性と人間工学

ユーザーが製品を快適に、直感的に操作できるかどうかも筐体設計の重要な側面です。ボタンやスイッチ、インターフェースの配置、持ちやすさ、使いやすさといった人間工学に基づいた設計は、ユーザーの満足度を向上させ、誤操作を減らします。これは、特にデザイナーがその腕の見せ所となる領域です。

性能維持に不可欠な機能性と構造的サポート

筐体は、単なる保護シェルではなく、製品の性能を直接的に支える重要な機能も果たします。

・放熱性

電子機器は動作中に熱を発生し、過度な温度上昇は性能低下や故障の原因となります。筐体設計では、熱伝導性の高い材料の選定、放熱フィン、通気孔、冷却ファンなどの適切な配置により、効率的な熱排出を考慮する必要があります。これは、特に高性能な電子部品を搭載する製品において、その安定動作と寿命を左右する極めて重要な要素です。

・構造的サポート

内部の基板や部品を正確な位置に固定し、製品全体の安定性を確保します。部品同士の干渉を防ぎ、組み立てやすさも考慮した設計が求められます。

コスト効率と生産性の向上(ベンチャー企業にとっての重要性)

特にベンチャー企業にとって、市場投入までのスピードとコスト効率は死活問題です。筐体設計は、この点にも大きな影響を与えます。

・製造性とコスト削減

加工のしやすさ、部品点数の削減、標準部品の活用などを設計段階で考慮することで、製造コストの低減と納期短縮を実現できます。不適切な設計は、後工程での手戻りや不良発生に繋がり、結果的にコスト増大と時間的損失を招きます。

・メンテナンス性

製品が市場に出てからの修理や部品交換のしやすさも、長期的な運用コストに影響します。将来的なメンテナンスまで見越した設計は、顧客満足度だけでなく、企業のサポートコスト削減にも貢献します。

筐体設計は、単なる「箱のデザイン」ではなく、製品のあらゆる側面に影響を与える戦略的なプロセスです。次のセクションでは、この多角的な要求に応えるための材料選定と、それぞれの材料が持つ特性について詳しく見ていきましょう。

デザイナーの方が知るべき筐体材料の選び方

筐体設計において、材料選定は製品の機能性、耐久性、美観、そしてコストを大きく左右する重要な要素です。デザイナーとしては、それぞれの材料が持つ特性を理解し、製品のコンセプトや使用環境に最適なものを選ぶことが求められます。ここでは、主な筐体の材料とその特性、そして具体的な選択肢について解説します。

筐体の主な種類と材料特性

筐体は大きく「金属」と「非金属」に分けられます。それぞれの加工方法や特性を理解することが、適切な設計への第一歩です。

・板金筐体:強度と信頼性、そして放熱性

鉄やアルミなどの金属板を曲げ、溶接、抜き加工して作られます。金型が不要なため、少量生産や試作、多品種少量生産に向いており、イニシャルコストを抑えられます。比較的大きなサイズやシンプルな形状に適しています。用途としては、医療機器、産業機器、電子制御ボックスなど、高い剛性や電磁シールド性能が求められる分野で多く使われます。窓やスイッチ、ポート、排水口などの加工もしやすい柔軟性があります。

・ダイカスト筐体

アルミニウムや亜鉛などの金属を溶かし、高圧で金型に流し込んで成形します。樹脂筐体と同様に高い量産性を持ち、複雑な形状にも対応可能です。樹脂よりも強度が高く、熱伝達が良いため、放熱効果を目的とした設計に適しています。振動対策や放熱が求められる電子部品、自動車部品、一部の産業機器などで利用されます。ベンチャー企業にとっては、大量生産時の単価を抑えつつ、高い堅牢性と機能性を両立できる選択肢となります。

・樹脂筐体

主に射出成形によって加工され、複雑な形状や一体成形が可能です。金属に比べて軽量であるため、持ち運びを重視する製品に適しています。また、絶縁性に優れている点も電気・電子機器の筐体として強みです。金型を使用するため初期投資は必要ですが、大量生産時の単価を大幅に抑えることができます。スマートフォン、パソコン周辺機器(マウス、プリンター)、小型家電、センサー類など、幅広い民生品に採用されています。材料としては、 ABS樹脂、PP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)など、様々な種類があり、それぞれ強度、耐熱性、耐候性、加工性などが異なります。設計要件に合わせて最適な樹脂を選定する必要があります。デザイナーは、樹脂の持つ豊かな色や質感、成形による複雑な曲面表現を活かし、製品の個性を際立たせることができます。

・セラミック筐体

腐食性の高い環境や特殊な耐熱性が求められる場合に有効ですが、加工が難しく、コストも高くなる傾向があります。熱伝導性が低いため、熱対策が必要な場合は設計に工夫が必要です。

・複合材料筐体

2種類以上の材料を組み合わせることで、それぞれの長所を活かした筐体を設計できます。例えば、軽量性と強度を両立させるために、樹脂に繊維強化プラスチック(FRP)を組み合わせるなどがあります。

材料選定の総合的な評価ポイント

筐体の材料選定にあたっては、以下の要素を総合的に評価することが不可欠です。

・機械的特性:強度、剛性、靭性、重量、耐衝撃性。
・電気的特性:電気伝導性、絶縁性、帯電性、磁性。EMC対策の観点からも重要です。
・熱特性:耐熱性、熱伝導性、断熱性。放熱設計に直結します。
・環境特性:耐腐食性、防水・防塵性、耐候性、耐薬品性。使用環境に適応できるか。
・加工特性:切削性、溶接性、成形性、表面処理性。製造プロセスに適合するか。
・コスト:材料費だけでなく、加工費、金型費、表面処理費など、トータルコスト。
・経年特性:時間経過による劣化、変形、色変化など。

ベンチャー企業においては、初期投資や量産コストを抑えつつ、製品の信頼性を確保できる材料選定が特に重要です。例えば、試作段階では3Dプリンターで様々な材料の特性を評価し、量産時には射出成形や板金加工のメリットを最大限に引き出す材料を選ぶといった戦略が有効です。

デザイナーは、機能性と美観を両立させるために、これらの材料特性を深く理解し、表現したいデザインコンセプトと、製品の性能要件、そしてコストバランスを最適化する材料を選び出す力が求められます。次のセクションでは、特にベンチャー企業が着目すべき、具体的な機能性設計のポイントについて解説します。

ベンチャー企業が着目すべき機能性設計のポイント

筐体設計は、製品の見た目を決めるだけでなく、その内部で最高の性能が発揮されるよう、様々な機能的な要件を満たす必要があります。特にリソースが限られるベンチャー企業にとっては、初期設計段階でこれらの機能性をしっかりと見極め、最適なバランスで設計に落とし込むことが、後の大きなコスト削減と製品の信頼性確保に直結します。ここでは、特に重要な機能性設計のポイントを解説します。

熱対策設計:製品の安定稼働と長寿命化のために

電子機器内部では、部品が動作する際に熱が発生します。この熱を適切に処理できなければ、部品の故障、性能低下、製品寿命の短縮を招きます。

・材料選定による効率的な放熱

アルミニウムなどの熱伝導率が高い材料を選定することは、効率的な放熱の第一歩です。

・構造設計

筐体の形状を工夫し、放熱フィン、通気孔、冷却ファンなどを適切に配置することで、内部の熱を効率的に外部へ逃がします。空気の流れを妨げない部品レイアウトも重要です。

・発熱部品の配置

発熱量の大きい部品は、周囲の部品との距離を確保したり、空気の流れの風上に配置しないようにしたりすることで、熱の集中を避けることができます。

・防水・防塵性との両立

屋外に設置する製品など、防水・防塵性能が求められる場合、筐体に穴を開けることができません。この場合、密閉性を保ちつつ、ヒートパイプや密閉型ファン、熱伝導性の高い接触面積の確保、あるいはエアコンや遮光板の設置といった高度な熱対策設計が不可欠となります。ベンチャー企業は、製品の使用環境を明確にし、必要とされる熱対策のレベルを見極めることが重要です。

防水・防塵設計(IP規格):過酷な環境下での製品信頼性

製品が水や粉塵にさらされる環境で使用される場合、筐体による防水・防塵対策は、製品の信頼性を保証するために不可欠です。

防水・防塵性能は、国際電気標準会議(IEC)が定めるIP(Ingress Protection)規格によって示されます。IP規格は、最初の数字が防塵性能(0〜6)、2つ目の数字が防水性能(0〜8)を表し、数字が大きいほど保護性能が高くなります。例えば、IP67は「粉塵が内部に侵入しない(完全な防塵性能)」かつ「一時的に水中に浸しても有害な影響を受けない(防浸形)」を意味します。

高い防水・防塵性能を実現するためには、筐体のつなぎ目、開閉部、ケーブル引き込み口などに、パッキンやシール材を適切に配置し、高い密封性を確保する設計が求められます。

ベンチャー企業は、製品のターゲット市場と使用環境を明確にし、過剰な性能を求めすぎずに、必要十分な防水・防塵レベルを設定することで、コストと設計工数を最適化できます。

EMC(電磁環境両立性)対策:内部回路の安定と法規制順守

電磁ノイズは、電子機器の誤動作や故障の原因となるだけでなく、他の機器への干渉を引き起こす可能性もあります。EMC対策は、製品の信頼性と市場での流通性を確保するために重要です。

・ノイズシールド

金属筐体は、外部からのノイズ侵入を防ぎ、内部で発生するノイズの漏洩を抑制する効果的なシールドとなります。

・導通の確保

シールド効果を最大限に発揮するためには、金属筐体のつなぎ目や開閉部、通気口などの開口部、ケーブルのシールドと筐体との接続部において、確実な導通を確保する設計が不可欠です。導電性ガスケットやテープ、導電性クランプなどが用いられます。

・早期検討の重要性

EMC対策は設計の初期段階で検討することが極めて重要です。最終段階での追加設計は、納期遅延やコスト増加に直結する可能性が高いため、ベンチャー企業は特に注意が必要です。

・樹脂筐体での課題

近年、製品の小型化・軽量化に伴い、樹脂筐体が採用されるケースが増えています。しかし、樹脂は導電性が低いため、金属筐体に比べてEMC対策が難しくなる傾向があります。この場合、内部に金属シールド層を設ける、導電性塗料を塗布するなどの工夫が必要です。システムクロックが高い製品では、わずかな隙間からでも高周波ノイズが放射されるため、ネジ止めの間隔をノイズ波長の1/4以下にするなどの精密な設計が求められます。

これらの機能性設計は、製品が市場で安定して稼働し、顧客に価値を提供し続けるための基盤となります。ベンチャー企業にとっては、これらの要素を「後回し」にすることなく、設計の初期段階から専門家の知見を取り入れ、全体最適な視点で取り組むことが成功への鍵となります。次のセクションでは、設計プロセス全体の効率化と、最新ツールの活用について掘り下げていきます。

効率的な筐体設計プロセスと最新ツール活用

製品開発のスピードが求められる現代において、筐体設計のプロセスをいかに効率化し、高品質な製品を迅速に市場に投入するかは、特にベンチャー企業にとって競争優位性を確立する上で極めて重要です。ここでは、一般的な筐体設計の流れと、その中で活用される最新のツールについて解説します。

筐体設計の一般的なプロセス

筐体設計は、企画から量産まで、いくつかの段階を経て進められます。各段階での連携と設計の質が、最終的な製品の成否を左右します。

企画・要件定義: 製品のコンセプト、ターゲット顧客、使用環境、満たすべき機能、コスト目標などを明確にし、筐体に求められる具体的な要件を洗い出します。

・構想設計

企画に基づいて、筐体の外観イメージ(意匠デザイン)や、内部部品の配置を考慮した大まかな構造を検討します。この段階で、振動、錆、変形など、想定される課題も洗い出します。

・基本設計

構想設計を具体化し、主要な寸法、材料、部品構成などを決定。この段階で、内部コンポーネントとの整合性も確認されます。

・詳細設計

CADソフトウェアを用いて、筐体の各部の寸法、形状、部品配置、加工方法などを詳細に決定します。放熱設計、防水・防塵対策、EMC対策など、機能性設計の具体的な落とし込みも行われます。

・生産設計

量産を前提に、製造現場の作業性、品質、コストなどを考慮し、最終的な設計調整を行います。加工現場の下工程(溶接、塗装など)の作業性や歩留まりまで配慮した全体最適な設計が求められます。

試作品製作・評価: 設計した筐体の試作品を製作し、機能、組み立て性、干渉の有無などを検証します。このフィードバックを設計に反映させ、量産時の問題を未然に防ぎます。量産・生産: 試作評価で得られたデータをもとに最終設計を行い、量産体制に入ります。

最新ツールの活用による効率化と品質向上

近年、デジタル技術の進化により、筐体設計の質とスピードは劇的に向上しています。ベンチャー企業やデザイナーは、これらのツールを積極的に活用することで、開発期間の短縮、コスト削減、そして設計品質の向上を実現できます。

・3D CAD(Computer-Aided Design)ソフトウェア

SOLIDWORKS, CATIA, Creo, NX, iCAD SXなど、多機能な3D CADソフトウェアは、筐体のモデリングだけでなく、内部部品とのアセンブリ、詳細図面作成、機構シミュレーション、応力解析、レンダリングなど、様々な機能を統合しています。内部部品の3Dモデルと連携することで、干渉チェックやクリアランスの確保を設計段階で容易に行え、手戻りを大幅に削減できます。デザイナーは、3D CADを用いることで、複雑な曲面やデザインを正確に表現し、視覚的なフィードバックを早期に得ることが可能です。

・CAE(Computer-Aided Engineering)ソフトウェア

強度解析、流体解析、熱解析、振動解析などを行い、設計の検証や最適化に利用されます。試作前にシミュレーションを行うことで、問題点を特定し、設計を改善できるため、試作回数を減らし、開発コストとリードタイムの削減に大きく貢献します。特に、放熱設計や構造的サポートの検証において、CAEは不可欠なツールです。

・3Dプリンター

3Dプリンターは、設計した3Dデータから直接、物理的な試作品を短時間で製作できるため、設計のフィードバックサイクルを大幅に加速させます。

・材料特性の評価

真空注型などと組み合わせることで、最終製品に近い材料で試作を行い、より実践的な評価が可能です。ベンチャー企業は、3Dプリンターを積極的に活用することで、開発リスクを低減し、より迅速な市場投入を実現できます。デザイナーも、デザインの具現化と検証をスピーディーに行うことが可能です。

・パラメトリックデザイン

特定の設計パラメーターを変更するだけで、筐体の形状や機能が自動的に最適化される次世代の設計手法です。

複雑な放熱穴の最適化や、様々なバリエーションの設計検討に活用でき、デザイナーの創造性を広げるとともに、設計効率を向上させます。これらのツールを効果的に活用し、部門間の密なコミュニケーションを確保することで、筐体設計はより質の高い、競争力のある製品開発へと繋がります。特に、専門の筐体設計者でない場合でも、これらのツールを活用し、必要に応じて専門家のサポートを得ることで、無理のない、全体最適化された設計が可能となります。

コストを抑えつつ品質を高める筐体設計のコツ

製品開発において、筐体設計は製品の品質、性能、そして市場での競争力を左右する重要な要素です。特にベンチャー企業にとって、限られたリソースの中でコストを抑えながらも、品質の高い筐体を実現する設計は、成功への鍵となります。ここでは、コストダウンと品質向上を両立させるための具体的な設計のコツを紹介します。

部品点数の削減と一体化設計

筐体の部品点数を減らすことは、材料費、加工費、組み立て工数、管理工数など、あらゆる面でのコストダウンに直結します。

・一体化設計

複数の部品で構成されていた機能を、一つの部品に統合して設計することで、部品代の低減、取付作業の削減、組み立てスピードの向上、品質の安定化を実現できます。例えば、板金筐体において、溶接構造をフレームにパネルをビスで固定する構造に変更することで、溶接工程と塗装パーツの小型化によるコストダウンと納期短縮が可能です。

・機能統合

部品を減らすだけでなく、例えば固定と放熱といった複数の機能を一つの設計要素に持たせることも、効率化に繋がります。

 製造プロセスの最適化と加工性の考慮

設計段階で製造プロセスや加工方法を十分に考慮することで、後工程でのトラブルを減らし、コストとリードタイムを削減できます。

・標準部品の活用

可能な限り汎用性の高い標準部品や材料を使用することで、調達コストを抑え、サプライチェーンのリスクを低減できます。

・板厚と仕様の最適化

必要以上の板厚や過剰な精度はコスト増大に繋がります。製品の要求性能を満たしつつ、最適な板厚や加工精度を見極めることが重要です。

・加工現場への配慮

曲げ加工のR(アール)の適切な設定、溶接箇所の設計、抜き加工の形状など、加工現場の作業性や歩留まりに影響する要素を設計段階で考慮することが大切です。無理な設計は、加工不良や溶接不良、塗装不良に繋がり、品質低下やコスト増加の原因となります。デザイナーも、デザインを実現する上で製造上の制約を理解しておく必要があります。

・量産体制の整備と工数簡略化

大量生産を前提とする場合は、金型を用いた射出成形やダイカストなど、量産性に優れた加工方法を前提とした設計が求められます。また、組み立て工数を極力簡略化できるような設計は、人件費削減と生産効率向上に大きく貢献します。

試作・評価の徹底による手戻り防止

量産開始後の手戻りは、最も大きなコストと時間の損失に繋がります。設計段階での徹底した試作と評価は、これを未然に防ぐための重要なステップです。

・多角的な試作

3Dプリンターによる機能・組み立て性の検証試作、簡易金型(注型)による最終材料に近い試作、そして機能評価のための試作など、段階に応じた試作を効果的に組み合わせます。

・早期フィードバック

試作段階で得られた問題点や改善点を迅速に設計にフィードバックし、修正を重ねることで、量産時の問題を限りなくゼロに近づけます。これは特にベンチャー企業が市場投入までの時間を短縮し、開発リスクを低減するために不可欠です。

環境への配慮と経年特性の考慮

長期的な視点でのコスト削減と製品価値の維持には、環境への配慮も欠かせません。

・耐久性とメンテナンス性

使用環境に応じた耐久性を持たせることで、製品の寿命を延ばし、故障による交換や修理のコストを削減します。また、部品交換や清掃が容易な設計は、メンテナンスコストの削減に繋がります。

・表面処理の最適化

防錆、耐摩耗性向上、美観維持を目的とした塗装やめっきなどの表面処理は、製品の経年劣化を防ぎ、長期的なデザイン品質を保ちます。色、ツヤ、膜厚などの品質保証も重要です。

筐体設計は、多くの部門が連携して進めるべきプロセスです。デザイナーは美観と操作性を、エンジニアは機能性と製造性を、そしてベンチャー企業の経営者はコストと市場性を追求します。部門間の密なコミュニケーションと、全体最適な視点を持つ専門家との連携が、コストを抑えつつ高品質な製品を生み出すための最良の道となります。

 

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